適正な予算を教えてくれない
不動産仲介会社が言うところの「予算」というのは、本来の意味の「予算」ではありません。
返済比率から算出した「借入可能額」と、「購入に拠出可能な現金」「諸経費概算」をもとに、購入「できる」物件価格のことを便宜上、「予算」と言っているにすぎません。
不動産会社は「借りられる金額」を「予算」だとして教えてくれますが、
「無理なく長期間払い続けていくことができる物件価格」
は教えてくれませんし、そもそも教えられません。
「あなたには高い物件だから止めた方がいいです」とは言わない
例えば物件価格5,000万。諸経費も借り入れ予定で、物件価格100%以上の資金計画を組んだとします。返済比率的にはギリギリ収まっているので、事前審査も通ります。つまり物件購入のため、現金を一切出さない購入計画です。
現金を出さない点では同様ですが、
「出そうと思えば出せるけど、何かあった時のために現金は取っておきたい」
というお客さんと、
「単純に現金がない。だけど家が!マンションが!!マイホームがどうしても欲しい!!!」
という人とでは、抱えるリスクは全く違います。
その他にも、ご主人単独では返済比率がオーバーしてしまうため、奥さんの収入を合算し借入可能額をアップさせて、物件を購入する資金計画を不動産会社が提案することがあります。
当然ですが、これは不当な営業行為でもなんでもなく、欲しいと願うお客さんの想いをかなえる使命感にかられた、不動産会社なりに精いっぱい努力した結果の提案です。不動産会社としては至って正しい行為です。
しかし、その計画が根本的に返済可能な計画なのかどうかまでの判断はできません。不動産会社の仕事は、欲しい物件を買ってもらうことで完結します。
「返済比率には収まっていますが、諸経費分も現金が用意できないというのは、無理のある計画ですよ」
「収入合算しなければ購入できない物件は、お客様にとって『高い』ということですよ」
などと、購入を止めるような提案は絶対にしません。
まとめ
以上、
「物件購入時に、不動産仲介会社がやってくれないこと」
でしたが、いかがでしたか?
上記のように、購入を思いとどまらせるようなアドバイスをしないとはいえ、それが悪意のある行為かと決して言ったらそうではありません。一生懸命に、不動産仲介業者としての使命を果たしているにすぎません。
不動産仲介業者の使命とは、不動産の購入が円滑に進むようサポートすることであり、そのサポートの報酬として仲介手数料があります。どうにかして希望の物件を購入してもらおうと、様々な提案をしてくれる担当者は、物件購入がはじめてのみなさんにとっては、とても頼もしく映るでしょう。
しかしその業務は、成約をもって完結します。購入後の返済生活がどのようになるのかまでを考えることはありません。ですから、今後の長きにわたる返済生活を送る当事者自身が、人任せではなく主体性をもってじっくりと購入後の返済生活を考えなければなりません。
まず第一に頭に入れておくべきことは以下の1点。
借入可能額 ≠ 予算
ということです。
この1点を知っているか知らないかだけでも、大きなアドバンテージになるはずです。ぜひ、頭の隅にでもインプットしておいてください。
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