売却理由を考える
そもそもなぜ売却なのか?
なぜ売却を思い立ったのか?まずはその理由を明確にする必要があります。不動産売却は、ほとんどの人にとっては初めての経験で、未知の領域です。あまり検討することなく、勢いで不動産会社に駆け込んでしまう人が驚くほど多いのが現状です。
「不動産売買のような大きなお金が動くのだから、まずは大手だろう」
と、ネームバリューがある不動産会社に「とりあえず」相談、「とりあえず」査定を依頼してしまいます。もし、
「売却する確固たる理由がある」
というのであれば、その選択肢に間違いはないでしょう。しかし、
「なんとなく売却かな~」
と、果たして売却が正しい選択肢なのか、まだはっきりしないのであれば、まずは売却するべき理由を明確にすることからはじめるべきです。売買以外にも、人に貸す、もしくはいまはあえて何もしない、という選択肢もありえるからです。
「縦割り」な不動産業界
不動産業界は縦割りです。自分の担当する業務以外の提案は行いません。相談者にとってベストの提案が、その会社にとってはベストでないことがあるからです。
例えば、ぼんやりとしか売却を考えていなかった相談者が、ネームバリューの有る不動産売買を専門に扱う不動産会社Aに行ってみたところ、担当者がこう言いました。
え?賃貸?・・・賃貸も悪くないと思いますが、今は借り手市場でなかなか入居者が決まらない状況です。なにかとうるさい入居者も最近は増えてきているようですし、退去の後にはその都度リフォームがかかります。オーナーさんの気苦労が増えるだけだと思います。あまりお勧めはしませんね。
と提案されます。
次に賃貸を専門に扱うネームバリューの有る不動産会社Bに行ってみたとします。
え?売却ですか?・・・確かに一時的にまとまったお金は入ってきますが、貸して所有し続ければ長期的に副収入を得ることが出来ますよ。売ってしまったらそれまでです!せっかくの資産ですから、有効活用するべきだと思いますよ。
自分のフィールドでしか物事を考えない
A社もB社も決して間違ったことを提案しているわけではありません。
しかし、自分のフィールド(賃貸、売買)でしか物事を考えられないので、相談者のための提案をしているように見えますが、結局は自分の仕事になる方向にしか話をもっていこうとしません。
ベストの選択が売買ではなく実は賃貸だったしても、それを正直に提案する売買専門業者などいるはずがありません。
相談する不動産会社選びは慎重に
「売却する!」
という意思と理由が明確ならば、売買を専門に扱う不動産会社に相談しても良いと思います。しかし、そうでないのであれば、賃貸・売買の専門会社ではなく、両方を扱っている不動産の専門家に相談してみることをオススメします。
大手のようなネームバリューはないかもしれません。しかし、相談者も気づいていないような、隠れた願望を見つけ出し、ベストな提案をしてくれるそんな不動産会社に出会うことが出来たなら、結果それが一番です。なぜなら不動産売却における成功の秘訣は、不動産会社選びが大きなウェイトを占めているからです。
査定
所有している不動産が、いくら位で売れるのかを不動産会社に調べてもらうことを
といいます。周辺の成約データや、近隣で売り出されている物件の坪単価。またここ数年の路線価や公示価の推移を参考に、最後は不動産会社や担当者の過去の取引経験から金額を提示することが通常です。
不動産会社にとって査定とは、売却を検討中のオーナーとコンタクトを取ることが目的なので無料です。室内や現地を見ないで、周辺環境や取引事例だけを参考にざっくりとした金額提示することを
「机上査定」
実際に現地を見て金額提示を行うことを
「実査定」
と区別しているところが多いようです。
引越し業者の査定や車の買い取り査定との違い
引っ越し業者や、車の買い取りでも査定がありますが、彼らがいうところの「査定」と、不動産の「査定」というのは、言葉は同じですが、全く別物です。
引っ越し業者にしろ、車の買い取り業者にしろ、彼らの査定価格というのは、
「提示した金額で引っ越し業務を請け負う」
「提示した金額で車を買い取る」
ということを意味しています。
しかし不動産査定の場合、査定する側がその金額で買い取ること、または売れることを保証するわけではありません。あくまでも
「この位の金額であれば売れるでしょう」
と専門的立場からアドバイスするだけなのです。それが不動産の査定です。
多数の不動産会社に査定依頼を出すことはオススメしません
一度に多数の不動産会社に依頼することはオススメしません。なぜなら、不動産会社が売却依頼欲しさに各社がかけひきを行うからです。
複数の不動産会社が入れ替わり立ち替わりで査定に来るようになると、それぞれが他社の伝える査定金額を気にして、本当の査定価格を言いません。なぜなら、最初に査定価格を提示してしまうと、その金額が他の会社の叩き台になってしまうからです。
他社がどれくらいの金額を伝えているのかある程度聞き出したうえで、最後にどこよりも高い金額を伝えようとするのです。つまり不動産の査定では
「後出しじゃんけん」
がなにより強いのです。ですから、
「調査して再度お伺いさせて下さい」
といって、回答を避けます。二番目に訪問した不動産会社は、自社が何番目に来たのかを把握したうえで、
「他社さんはどの位の金額でしょう?」
と聞きだそうとします。一番目の不動産会社が金額を伝えていないので、ここで二番目の不動産会社が金額を伝えてしまうと、その価格がたたき台となってしまいます。それを避けるために二番目の不動産会社も、調査する時間が欲しいとかもっともらしい理由をつけて、
「後日またご報告にあがります」
となります。イタチごっこのようで笑ってしまいますが、本当に現場で行われていることです。仮に一番目の不動産会社が既に金額を伝えていたら、
「その価格はずいぶん安いですね。当社であればもっと高く売れると思いますよ」
と、言えば済むのです。
このように次から次へ不動産会社が査定に来ては、他社の提案した金額を探り出そうとし、その価格よりも少しでも高い金額を提示しようとする「意味のない査定ごっこ」が繰り広げられることになるのです。
査定 = 媒介契約締結の場ではない
大体どこの不動産会社も、査定は無料で費用はかかりません。ですから、気軽に頼んで良いのですが、実際はその査定が文字通り「査定」になっていないことのほうが多いのです。どういうことかというと、ほとんどの不動産会社がそうですが、
査定=媒介契約取得の場
と考えているからです。
複数の不動産会社と査定でバッティングした場合、売主が何を判断材料として依頼先を選ぶかというと、担当者とのフィーリングももちろんありますが、なによりも提示される金額です。
それを十分理解している不動産会社は、当然、シビアでリアルな査定価格ではなく、売主が喜びそうな高い金額を提示することになります。売主も、例え提案された金額が、相場よりも高いものだと思ったとしても、
「当社にはこの金額で買うとお客さんがいます!」
と、自信満々に言われたら、一番高い金額を提案してくれたその不動産会社に依頼したくなるはずです。
要するに不動産会社にとっての査定とは、適正な価格を提示することではなく、売主の希望価格を聞き出し、その希望に沿った価格を提示して、専属専任・専任で媒介契約を結ぶことが目的となっています。
このように、専属専任や専任媒介売却で依頼を受けたいがために、明らかに相場を無視した、高すぎる価格を提示することに対しての批判は以前からあります。
「当社であればこの価格で売って見せます!だから専任下さい」
と、高い金額をもっともらしい理由で伝えられて、悪い気のするオーナーさんはいません。良い気分で売却に出してみますが、結果、案内もほとんどなく、結局売れに金額を下げさせるのはある種、詐欺みたいなものなのですから。
高い金額で媒介契約
しかし、
高い金額で査定→媒介契約締結
することが必ずしもダメだという訳ではありません。周辺物件の売り出し・成約状況を提示し、適正な金額を伝えた上で、売主さんの売却事情を踏まえ、
「急いで売る必要はないようですから、最初はご希望の金額で出してみたらいかがですか?」
と提案するのはまっとうな行為で、それが本来あるべき不動産査定であり不動産会社の役目です。仮に売れずに金額の見直しを提案する際も、違和感なく受け入れてくれると思います。問題なのは適正な金額を伝えないで、あたかも
「自社に任せてもらえれば他社より高く売れる」
とだけしか言わず、オーナーが
「本当の査定価格」
を知らされないことが問題なわけです。
オーナーとしては、不動産会社が伝える耳触りの良い査定金額はいったん疑問に持った方が良いと思っておきましょう。そもそも、査定する不動産会社によって、金額が大きな差が出ること自体、おかしな話なのですから。
媒介契約
不動産会社に査定をしてもらい、どこの不動産会社に依頼するのかを決めたなら、次は不動産会社と媒介契約を締結します。「契約」とありますが、そんなに仰々しいものではなく、要するに
「媒介契約書上に記載されている不動産の売却を依頼する」
といった依頼書です。
口頭で売却の依頼を受け付けたとして、販売活動を始めてしまう会社もありますが、ちょっと名の通った企業であれば、まず間違いなく書面で契約を交わします。
売却の依頼を受けた不動産会社は、その物件の売却担当企業として、主に以下のような業務を行います。
- 物件の調査
- 販売図面の作成
- 販売状況を分析しての価格変更の提案
- 他業者の案内の立ち会い
- 買い手との金額交渉
取引がまとまった後は、
- 契約書などの作成
- 決済の段取り
を行います。
媒介契約書の種類
媒介契約には以下のように3種類の形式があります。
専属専任媒介
文字面から
「独占販売」
のようなイメージを受けますが、物件情報はレインズを通して他不動産会社へ流れますので、どちらかというと販売の
「担当窓口」
と思った方が良いでしょう。
ただ、売却の窓口は一つです。つまり契約を交わした不動産会社しか販売の窓口になれません。自己発見取引(*売主本人が連れてきた人と契約すること)も、契約を交わした不動産会社を通さないと契約できません。
その他、レインズに登録するのは5営業日以内、営業活動報告書は一週間に一度と決められています。
専任媒介
「専属専任媒介契約」と同じく、契約を交わした不動産会社しか販売の窓口となれない。ただ、自己発見取引は○。レインズへは7営業日以内の登録、営業活動報告書は二週間に一度と決められています。
専属専任媒介・専任媒介のメリット
業者が必死になる
売却活動を一社限定で委任するので、当然、その業者が売却活動をさぼったりすると売れません。依頼を受けた不動産会社の責任は非常に大きいのです。成約に至らないと仲介手数料はもらえませんし、それまでにかかった売却活動の費用も回収出来ません。
中々売れなかったり、売主に動きが悪いと判断されると、媒介契約を余所に切り替えられてしまうかもしれません。必死にならざるを得ません。これがメリットの一つとなります。
対応が一対一
販売の窓口が一つということは、その会社に様々な情報が集まります。つまり、
- お客さんからのお問い合わせの数
- 他業者からの問い合わせの数
- 案内した時のお客さんの感触
- 広告の反響結果
などが挙げられます。
こうした情報を不動産会社からフィードバックしてもらうことで、売主は現在の販売状況を正確に知ることが出来ます。また、これらのデータを参考にして、文字通り不動産会社と売主が顔を突き合わせて、成約というゴールまで二人三脚で進めていきます。
その物件に力をかけただけ、担当者も売り手と同じく、不動産に対して愛着が増していき、不思議なもので手をかけた分、成約に至る可能性は高くなります。
専属専任媒介・専任媒介のデメリット
一対一の関係が裏目に・・・
一対一という関係が、悪い方にひっくり返った場合です。もはや一部不動産会社の悪習となっている囲い込みをはじめ、売り手に真実の情報を伝えず、その不動産会社の都合によって情報が捻じ曲げられ、売却活動が左右されてしまうことがあります。
例えばあからさまな両手狙いで、他業者からの問い合わせがあるにも関わらず、一切紹介せず、
担当者 「案内どころか問い合わせもありません」
売主 「そうですか、金額が高いのでしょうか・・・」
担当者 「適正だと思うのですが、でも試しに少し下げてやってみましょう」
と、徐々に金額を下げていくなかで、自社でお客さんを見つけて両手。このような形です。選ぶ不動産会社によっては、不動産会社の思惑に左右されてしまう可能性があるというのがデメリットです。
みんな欲しがる専属・専任媒介契約
どの不動産会社も「専属専任媒介」もしくは「専任媒介」で売却を任せてくれないかと言ってきます。なぜなら専属・専任で売却の依頼を受けておけば、仮に自社で買い手を見つけることが出来なくても、他の不動産会社が買主を連れて来てくれることがあるからです。つまり、売り手の報酬だけは最低限確保できるのです。
とはいえ、もちろんお客さんが来るのをただ待っているだけではありません。販売の窓口としての責任が生じますし、適正な情報発信能力や交渉力や提案力、不動産のことはもちろんのこと、税金の知識も必要となり、高い専門性が要求されます。
しかしながらちゃんとマジメに販売活動をしておけば、必ず(*もちろん例外あり)報われるのです。
「専属もしくは専任で媒介を取得する=売り上げが計算出来る」
ということです。
一般媒介
複数の不動産会社に売却を依頼することが出来る。つまり売却の窓口が複数できるということ。レインズへの登録義務、営業活動報告の義務はありません。
一般媒介契約のメリット
売却の窓口を複数(いくらでも)作ることが出来るので、依頼された不動産会社がぼやぼやしていると、他社がさっさと売ってしまいます。良い方向に進めば、多数の不動産会社が他社に負けじと、積極的に販売活動を行うので、短期間で成約に至ることもあります。
例え依頼した不動産会社のうちの一社が、積極的に売却活動をしなかったとしても、競合他社が動いていますので、大勢に影響はありません。
「売り出し価格が適正である」
という前提ではありますが、人気のエリアや有名なマンションだと、業者間の競争意欲を掻き立てるということで、一般媒介の受ける恩恵はそれなりにあると思います。
ただ、上記のようなメリットが生まれるのは、一般媒介だろうがなんだろうが、媒介契約を結びたいと思わせるような、人気のエリアや有名マンションです。なおかつ売り出し価格が適正で、情報を出せば確実に、かつ早々に売れるであろうと判断された物件です。ですから、
「売却に時間がかけられるので、最初は少し高めに出したい」
となると、じっくりと腰を据えて販売活動を行っていかなければならないため、短期間で競争意欲を掻き立てて・・・、といったような一般媒介のメリットはほとんど期待できません。かえってデメリットばかりになってしまいます。
一般媒介契約のデメリット
複数の不動産業者が窓口になることで、同じ物件がさらされることになる
短期間であるなら良いですが、3か月以上、同じ情報が複数の不動産会社から出されているのは決して格好の良いものではないですし、消費者は、
良く目につく物件=にも関わらず売れてない物件=売れ残り物件
という論法で勝手に判断します。どんな商品でもそうですが、希少価値を感じられなくなると、途端に売れ行きは悪くなります。
提案をしてこない
媒介契約中の不動産会社が、互いに他社の動きをけん制しながら動くため、成約に至るための有意義な提案などはしてきません。
例えば、自分のところで値下げの提案を行って、提案の結果、売り出し価格を下げることになったとします。会社によって物件の売り出し価格が違ってはいけませんから、多少の時間差はあるものの、他業者から出ている同じ物件も、やがては全て同じ金額に変更となります。
つまり、誰が、どこが金額を下げようが、結局はすべての会社が同じ金額で販売をすることになるのです。自社が値下げのための提案をしても、その提案の結果、余所の会社で決まってしまっては、自社の仕事はおろか、他社の成約をアシストした結果になってしまいます。
不動産業者同志による足の引っ張り合い
また、仮に値下げの提案をしてきたところで、他社が
「まだちょっと早いと思いますが?」
と、値下げ提案した業者に良い格好してほしくないために、自社が何もしないのを棚に上げて、値下げ提案に反対してくる場合もあります。専属専任媒介や専任媒介に見られるような囲い込みの心配はありませんが、こうした足の引っ張り合いが発生してしまうのもデメリットの一つです。
積極的に動かない
一般媒介では、すぐに売れない物件だと分かると、
「どうせすぐには売れないし、余所も販売してるから・・・」
と、積極的に販売活動を行わないところも多くあります。
専属専任媒介・専任媒介ならば、広告を出したとしても、成約に至れば費用は回収することはできますが、一般媒介の場合、広告を出したにも関わらず、他社で決まってしまっては、その広告費用の回収は一切出来ないからです。
一般媒介の注意点
一般媒介だからこそのメリットを実感できるのは、販売を開始して1か月程度です。しかし、1か月そこらでは売れずに、じりじりと焦りだしたときに陥りやすい考えが、
「あれだけの不動産会社に声をかけているのになんで?」
「ひょっとしたらもっと声をかけた方がいいのではないか?」
というものです。
こうした考えは全くの間違いです。一般媒介で多数の会社から出ている物件のことは、当然どこの不動産会社も知っています。
「のべつまくなし声をかけている物件の売主」
として、マイナス面で有名になってしまいます。
レインズやポータルサイトに、同じ物件が色々な不動産から出ている様は、眺めていてもカッコのいいものではありません。そうなってしまうと、たとえ新規の不動産会社に声をかけたとしても、形ばかり依頼を受けてもらうだけで、どこも一生懸命販売しない、ということになりかねません。
何社にも依頼することは出来ますが、お願いするにしてもせいぜい3社程度に収めておくのが良いでしょう。
途中解約も可能
一般的に媒介契約の期限は3か月とありますが、生真面目に契約期限を全うする必要は全くありません。
- 話が違う
- 一向に決まらない
- 全く報告がない
- 担当者の動きが悪い
などの理由で期限前でも媒介契約はいつでも打ち切ることが出来ますし、専属&専任から一般へ、その逆もしかり、媒介契約の種類を切り替えることも可能です。
売主が要求した実費を要した特別な広告などを行っていなければ、媒介契約の破棄・切り替え時に、違約金やペナルティなどかかりません。
媒介契約書の説明はちゃんと受けましょう
初めて不動産の売却を行うオーナーは、一般媒介契約のように、多数の不動産会社に売却依頼を出せるとは思っていません。それが媒介契約書の説明をよくよく受けてみると、どうやら「一般」という契約の種類があり、複数の不動産会社にも依頼が可能だとその時初めて知るのです。
そこを突っ込まれたくない(知られたくない)不動産会社は、
「媒介契約書の説明はサラッとすませて、専任以上で締結してしまいたい」
というのが本音です。何度も不動産の売却をしていて慣れているのであれば別ですが、ほとんどの人がそうではありません。対応した営業マンが信用出来そうな人だったとしても、必ず媒介契約書の説明は受け、不明点や疑問点はその場で解決しておきましょう。
売却を担当する不動産会社の規模が大きかろうが小さかろうが、やることにそれほど違いはありません。要は担当者の質によってすべてが全く違ってきます。
媒介契約書を説明する担当者の姿勢や、あなたの疑問に答える態度から、力量を推し量ることができるチャンスでもあるので、色々と質問してみるのが良いでしょう。
専属専任&専任媒介と一般媒介、どちらが良いのか?
双方のメリット、デメリットを把握したうえで、
「結局どっちがいいのか?」
というと、異論反論、様々な意見があるかと思いますが、私の意見は
「専任以上でお願いするべき」
だと思います。ただし、
「依頼する不動産会社やその担当者が信頼できるのであれば」
という条件付きです。
心底信頼できる(できそうな)人に、親切丁寧に膝を突き合わせて売却活動をしてもらって、悪い結果が出ることはまずありません。
ただ、信頼できるかできないのか、初めて接触した不動産会社やその担当者をそんなに簡単に品定めすることが出来るのか?というと、難しいというのもまた事実。
この場合の「信頼・信用出来る」というのは要するに、
「当たり前のことを正直に全力で行ってくれるのか?」
ということです。裏を返すとこうした当たり前のことさえ出来ない(しない)、不動産会社がまだまだ多いということでもあります。
- 知り合いに不動産会社がいる
- 知人の紹介
など、ある程度信頼できる不動産会社と最初にコンタクトが取れるのであれば、専任以上で任せてしまっても問題ないでしょう(*担当者とフィーリングが合わないなら話は違ってきますが)。
しかし、不動産会社とつながりがある人たちばかりではありません。一から信頼に値する不動産会社を見つけるにはどうしたらよいのか?ここで一般媒介を利用してみるのも手です。
つまり一般媒介で多数の不動産会社に依頼をして、実際に販売活動を行ってもらうのです。その動きや対応を観察することで、不動産会社の質を見極めるのです。一般媒介でそのまま決まってしまえば、それで万々歳でしょう。
仮に長期戦の様相を呈してきたら、一般媒介の中でも、特に一生懸命動いてくれた会社へ、専任以上へと切り替えるのです。なんでもそうかもしれませんが、実際作業してもらわないことには、不動産会社の実力なんて分かりっこありません。
「基本は専任以上で、不動産会社の質を見極める材料集めとしての一般」
決して一般的な使い方ではないですが、こうした利用方法もありだと思います。
ちなみに媒介契約前に、複数の不動産会社に査定をしてもらい、その際の対応を見てどこに依頼をお願いするのか?を検討するというのも一つの手です。信頼できる不動産会社や担当者を見つけるのが一番大変かもしれません。
販売後、売主が出来ること
不動産会社に売却を依頼すると、もはや売主が出来ることはそんなに多くはありません。売りに出したら基本は不動産会社にお任せしておくべきです。それでも売却活動がスムーズに進めるために、最低限やっておいた方が良いことはあります。
部屋を少しでも明るく見せるように
買主が内見に来る際は、全ての部屋・廊下・浴室の照明をつけ、カーテンは開け、部屋に入った時の印象を少しでも明るいものにしておきましょう。ビジネスやプライベートの場でも、初対面の第一印象というのは非常に重要です。それは不動産にも同じことが言えるのです。
もし第一印象で
「なんだか暗い部屋だな~」
との印象を与えてしまうと、その後、いくら明るく見せたとしても、その印象を挽回することは大変困難です。室内の照明だけは全部点けて、初めて足を踏み入れる人に、人工でも良いので少しでも明るい部屋だと印象付けましょう。
室内はキレイに清潔に
単純ですが、室内は可能な限りキレイにしておきましょう。もちろんモデルルームのようにする必要はありません。要するに整理整頓・室内のものはちゃんと片付けておき、生活感はありながらも、整った印象を持たれるようにしておくということです。
例えばダイ ニングテーブルに使ったコップが放置してあったり、灰皿がそのまま置かれていたり、雑誌が放り出してあったり、散らかった部屋はそれだけで室内を雑多な印象に見せてしまいます。こういうことがないだけで、室内のイメージはガラッと変わります。
また、浴室や洗面所、キッチンなどの水回りは要注意です。目に見えるようなカビがあるようなら、事前に掃除しておいたほうが良いでしょう。
室内がキレイで売却に有利になることはあれ、不利になることは絶対ありません。一度に綺麗にすることが出来ないなら、売却の検討を始めたころから少しずつ始めてみるのも良いと思います。手をかけた分だけ愛着は深まり、そうした注いだ売主の愛情は、買主にも必ず伝わるものです。
販売後、売主がやってはいけないこと
自ら物件をアピールし過ぎるのは避けるべき
今のお客さんは商品を押しつけられることを非常に嫌います。みなさんもデパートなどで経験があるかもしれませんが、聞いてもいないのにアピールしてくる店員さんを疎ましく思ったことはあるのではないですか?
売主が物件をアピールするということは、当然売りたいからであり、どれだけアピールされたとしても、買主にとっては押し売りされているように感じてしまいます。
売主にとっては色々な思いの詰まった不動産で、気に入っているところや便利な点、伝えたいことは山ほどあるかもしれません。しかし、内見にきた買い手の前ではおとなしくしておいた方が賢明です。お客さんに質問されたら少し答える程度に思っておくのが一番良いと思います。
不動産会社の販売手法に口を出し過ぎてはいけません
売却物件に自信を持っている売主に多いのですが、販売開始後、自分が思ったような結果が出ないことを、不動産会社の怠慢に結び付けてしまう人がいます。そして
「ああしてくれ」
「こうしてくれ」
とあれこれ販売手法に口を出してくるのです。
売れない原因が、単純に金額が相場に合っていない場合もあるし、タイミングかもしれません。もともと需要がそれほど多い地域ではないかもしれないし、成約に至らない理由を上げたらきりがありません。
そうした状況の中で不動産会社としてはベストのパフォーマンスを発揮できるように努力しています(いるはず)。しかし、売れないことを一方的に職務怠慢とみなし、営業手法にあれこれ口を出してしまうと、不動産会社の担当も人間です。面白いはずがありませんし、
「面倒な売主だな」
と思われてしまいます。
依頼者と受託者といった関係だったとしても、不動産の売却は不動産会社と売主との共同作業でもあります。売主が不動産会社に下手に出る必要はまったくありませんが、
「こっちが客なんだ!」
「さっさと結果を出せ!」
と上から目線で相対することだけは絶対に控 えるべきです。細かいことや一生懸命動いている不動産会社の行動を批判しても良いことはありません。選んだ会社の動きはしばらく静観しましょう。
販売金額の値下げ(下手な下げ方と上手な下げ方)
なかなかお客さんが決まらないとなると、成約させるためになんらかの手を打たないといけません。広告の配布エリアを変えてみる等、対策はありますが、絶大な効果があるわけではありません。
今まで売れなかった物件を売っていくためには、単純ですがやはり販売価格を下げるということが最も効果的なのは間違いありません。
ただし、何の考えもなく金額を下げればそれで解決かと言ったらそんなに簡単ではありません。値下げ一つとっても上手い値下げ・下手な値下げというのがあります。
下手な下げ方
下手な下げ方の筆頭がちょこちょこと、小刻みに値下げしていく方法です。
例えば3,480万の物件があったとして、
3,400万→3,350万→3,280万
といった具合に少しずつ、徐々に下げていくような下げ方です。レインズやポータルサイトでは、情報が更新されると、新着物件のように扱われます。しかし、残念ながら効果はほとんどありません。
なぜなら今のお客さんは不動産会社と同様(*もしくはそれ以上)に、物件の動向を非常に良く見ています。不動産会社よりも情報に敏感な人も多いのが現実です。そうしたお客さんはポータルサイトから新着情報として上がってきたとしても、以前から出ている物件が価格変更したに過ぎないということくらいすぐ把握してしまいます。
このような小刻みな値下げが何度も繰り返されていると、お客さんは
「この物件はどこまで下がるのか?」
「もうワンクッションすればまた下がるはず」
と判断して、手を伸ばすどころ様子をみようとします。結果、売却するために金額を下げたのにもかかわらず、何度も金額を変更をすることで逆に買い手に足元を見られてしまい売れづらくなってしまうのです。これが下手な下げ方です。
上手な下げ方
金額を下げるのは一度だけにします。ただし、その1回の値下げが買い手にとってインパクトのある下げ幅とならないと意味がありません。下手な金額の下げ方が数度に渡ったのに対し、効果的な下げ方は一回で3,280万まで一気に下げるのです。この動きを観察していた買い手は
「一度にここまで下がったら他の人に買われてしまう!」
「今が買い時だ!」
と、さっきとは逆に購買意欲を刺激され次のステップに進んでいくのです。
ただ、こうした効果的な下げ方をするためには、大体どのあたりで売れるのかを担当者や不動産会社が把握しており、その根拠を売り手にも正確に伝えているからこそ出来ることです。
「いくらで売れるか分からない、自信がない・・・。だからとりあえず細かく刻んで・・・」
という恐る恐るでは売れるものも売れません。こうしたところで不動産会社や担当者の力量が問われてくるのです。
目線を変える
上手い下げ方と下手な下げ方があるとお伝えしてきましたが、これらのことをピラミッドの図関係で表すことができます。このピラミッドを頭に入れて金額変更を行うとより効果的です。
自身で物件を探したことがある人なら分かるかもしれませんが、4,000万以上~4,500万未満といったように、大体「キリ」の良い金額で条件設定をしたのではないでしょうか。ほとんどの人がそのような探し方をされていると思います。
そう考えてみると、例えば現在4,200万の物件の金額変更をする場合。4,000万に変更したところで、今までと同じ4,000万以上~4,500万未満の見込み客にしかアプローチ出来ません。
つまりせっかく200万も価格を下げたのに、アプローチできる人数に変わりはないのです。金額を下げるのであれば、アプローチできる人数を増やすように下げなければ意味がありません。
ではどのようにしたら良いのか?
上に挙げた例を参考にすると、4,000万以上~4,500万未満から、3,500万以上~4,000万未満の土俵に落とすことが必要です。こうすることでいままでの4,000~4,500万未満では埋もれてあまり人目を引かなかった物件が、ランクを一つ落としたことで今までよりも多くの人の目に付くことになりますし、良い意味で「都落ち」してきた物件なので、競合物件のなかでも光る物件となっているはずです。こうした観点で金額を下げていくことで、より一層成約に近づく可能性が広がるのです。
100円の卵と99円の卵、たった1円しか違いがないのに99円がやたら安く感じさせる効果に似てなくもないですね。
交渉
売却を開始してしばらくすると、購入希望者から申し込み(*購入申込書)が入ってきます。金額も引き渡し条件も、全て売主の希望通りであればこんなに簡単なことはありませんが、そんなことはありえません。例え、金額含め物件の条件が良かったとしても、ダメ元で交渉してくるのがほとんどです。交渉が入ってきた時の考え方や心構えについて解説していきます。
金額交渉があった場合の考え方
不動産を売却開始後、購入の申し込みが入ってきたとします。しかし、価格交渉がある。例えばこんなケースです。
「物件価格が5,480万。5,200万での申し込み。」
特に販売開始後だと、
「ひょっとしたらもっと高い金額を提示してくれる買い手が見つかるかもしれない」
と考えてしまうので、なかなか悩ましい問題です。こんな場合に、売主が後悔することなく、判断を迷わないためには、どのように考えておくのがベストでしょうか?
「次にいつ入って来るか分からない買い手をあてもなく待つのは得策ではない。(取引を)まとめた方が良い」
と、余程のことがない限り、そのようなアドバイスを行う不動産会社が普通だと思います。特に
「3か月以内にどうしても売りたい」
など、売却に掛けられる期間に限りがある場合には非常にマトを得た回答だと思います。恐らく私も一度はそのようにアドバイスするでしょう。
なぜなら今回よりも高い購入価格を提示してくる買主が、残された期間内に現れるかどうかは誰にも分からないし、それどころか今回断った5,200万という価格と同じ額を、再び提示してくれる買主が現れるかどうかは誰にも分からないからです。
不動産会社は「これもご縁です」という都合の良い一言で片づけてしまうことが多いのですが、しかし最初に入ってきた条件が、振り返ってみると実は一番良かった、ということが(*統計を取った訳ではないので根拠となるデータが有るわけではないですが)不動産取引には実に良くあります。
売却にかけた時間分、比例して高い金額で売れるのであれば、販売期限ぎりぎりまで粘るべきでしょうが、残念ながらそんなに都合の良い話はどこにもありません。もちろん、売り急ぐ必要が全くなく、
「希望額で買ってくれる買い手が現れるまでひたすら待ち続ける」
という希望を持った売主だと話は違ってきます。もしそうなら、売主の希望・気持ちを無視して、入ってきた話でまとめようとする不動産会社のアドバイスは、売主の意に沿ったわけではなく、早くまとめたいと願うだけの不動産会社の不誠実な回答となってしまうでしょう。
「今入ってきている条件でまとめるか?」
「少しでも高い金額で買付が入ってくるまで待つか?」
決めるのはもちろん売主自身ですが、迷い始めたら最後、この問題に出口は見つかりません。どちらをとっても結局は
「もう少し高い金額で売れたはず」
「やっぱり・・・あの時売っておけば良かった・・・」
と少なからず取引自体を不満に思ってしまうことはあり得ます。そうならないために、売却のプロである不動産会社の協力のもと、以下のことを、売却を始める前に明確にしておくべきです。
- 販売にかけられる期間とその根拠(なぜその期間なのか)
- 確実に売れるで「あろう」金額の把握
- 売却しても良いと思う最低価格
中でも
「確実に売れる金額の把握」
つまり売主の期待値を込めた査定価格ではなく、厳密な査定。これが重要です。査定を間違わなければ、そしてその査定金額を売主が理解しておけば間違いないでしょう。言い方を変えれば、間違いのない査定をちゃんとやってくれる不動産会社を見つけることが売却成功の第一歩ということです。
契約
売主、買主、双方の仲介不動産会社が一同に会し、売買契約書、重要事項説明書の読み合わせ、署名・押印を行い、その後手付金の授受を行う。必要書類は以下の通りです。
必要書類
登記識別情報
登記識別情報というのは、昔で言うところの「権利証」のことです。大事なものなので、契約時に回収することはないですが、真正な所有者だということを確認します。紛失してしまっていることもあり、その際は決済時までに権利証・登記識別情報に替わる「本人確認情報書類」の作成を、司法書士に依頼しなくてはなりません。当然、費用がかかります。
仲介手数料半金
全額ではないですが、半分だけ請求されることがあります。媒介契約書に、仲介手数料の支払い時期の記載がありますので、事前に確認しておきましょう。契約時に売り手は、買い手から手付金を受け取ります。そのため、受け取った手付金の中から手数料の半金を支払うことが多く、契約時に現金を用意する必要がない場合が一般的です。
その他
- 印紙
- 実印
- 身分証明書
契約流れ
重要事項説明書の読み合わせ
不動産を購入する側に向けて行うこれから契約しようとする物件の重要な事項や、細かい契約上の取り決めを説明すること。説明がかかれた書面のことを重要事項説明書という。所要時間は大体1時間位で、通常契約書の読み合わせと同じタイミングで行うことがほとんど。説明書には売主・買主双方の署名、捺印が必要ですが、買主に向けての説明なので、売主不在で行われることも多い。
運転免許を持たない人が車を運転してはいけないように、重要事項説明を行うには、宅地建物取引士試験に合格し、宅地建物取引士証の交付を受けた免許者でなければいけません。
重要事項説明は後から言った・言わない、の水掛け論を予防するために、ものすご~く細かいことや
「当たり前すぎて書く必要もないのでは?」
といったことまで回りくどく説明されます。本来大した内容ではないけれど、普段あまり耳にしないような小難しい法律用語で説明されるため、説明がすんなり入って来ません。そのため何から何まで全部気になる買い手さんもいます。お客さんを不安に思わせることなく、適切に簡潔に、なおかつ外すところは外さず、説明を行える能力が不動産会社には必要だと感じます。
契約書の読み合わせ
売買契約書には、売買代金や引き渡し日以外に、以下の様な解除要件についての記載もあります。重要なことなので、よく理解しておきましょう。
手付解除
決められた日時までであれば、売主・買主双方とも、勝手な都合で契約を辞めることが出来ます。買い手であれば、支払い済みの手付金を放棄、売り手であれば買い手から受け取った手付金を返金し、さらに同額を支払うことで解除できます。契約から決済までの長さによって、手付解除期日は変わってきます
滅失による解除
天災地変や売主、買主どちらの責任でもない理由によって、滅失した場合、壊れてしまい買い手が当初の目的を達成することができないときは白紙解除となります。「買い手が当初の目的を達成することが出来ないとき」というのは、住宅であれば「住むことができなくなったとき」であり、修復が可能な場合は売り手が修復し、引き渡すことになります。
契約違反による解除
手付解除期日以降に、契約を解除したいというときは、契約違反による解除「違約解除」となります。通常は、売買代金の10~20%が違約金の額として定められます。仮に定められた額以上の損害が発生したとしても、定められた額以上の違約金を請求することはできません。
ローン特約による解除
決められた日時までであれば、融資を受けられないことを理由に白紙解約とすることができます。
瑕疵による解除(瑕疵担保責任)
引き渡し完了後、売主も知らなかった事由によって、買主が購入した目的を達成できないことが判明した場合は、解除となります。修復できるものについては、売主の責任で修復をしなければなりません。契約によって責任期間は異なりますが、3ヶ月間というのが一般的です。
- 土地:土壌汚染、コンクリートのガラ・浄化槽など撤去に費用を要する地中埋設物
- 戸建・マンション:雨漏り、シロアリ、主要な部位の木部の腐食、給排水管の故障
付帯設備表の読み合わせ
敷地内や室内の状態を売主・買主双方で確認しあう表のこと。「キッチン 有り・無し」と表記され、使えるものは「有り」に○をつける。あるが故障していて使えない場合は、備考欄に状況を記載する。契約時「有り」「故障なし」としたものが、引き渡し後、動作しなかったとしたら、引き渡しを受けて7日以内であれば、売主に修復義務がある。
署名・押印
売主は実印、買主は認印でも大丈夫です。
手付金の授受
売り手は、買い手から相応の額の手付金を、契約書に記名・押印後、受領し、領収書を発行します。債務超過の売買(*ローンの残高3,000万、売買金額2,000万)の場合は、ローン残高を万一返済できなかった場合のことを考えて仲介業者が手付金を引渡し時まで預かることがあります。
決済
- 権利証、印鑑証明書類の確認
- 出金伝票、入金伝票、振り込み伝票に記入
- 書類の不備がなければ振り込み手続き
- 待ち時間(おおむね30分~1時間)。この間に領収書への署名・捺印を済ませ、売主から買主への連絡事項、買主から売主への質問など、雑談が行われる
- 振込手続きが確認したら、仲介手数料、司法書士報酬を現金で支払い
- 売主口座に残代金の着金が確認できたら、領収書とカギを渡し、終了
- 司法書士はその足で法務局へ。所有権移転登記手続き
「引き渡し日」とも、「本契約」ともいいます。
取引に関わった不動産会社のほか、所有権移転登記手続きを行う司法書士も同席。買い手は購入した物件の残代金を支払い、固定資産税や、マンションであれば管理費・修繕積立金の精算を行い、カギの授受を行って解散となります。その後、司法書士が法務局に走り、所有権移転登記の申請が行われ取引が完了。これら一連の行為を「決済」と呼びます。
銀行で融資を受ける場合、決済場所は融資を受ける銀行の支店で行う場合が多く、所用時間は早くて30分。5日と10日が付くいわゆる
「ゴトー日(*15日、25日など)」
は銀行が混むため、かなり時間がかかり平均1時間前後。遅くて2時間。年度末だと混雑ぶりは殺人的で、何時間も待たされることもあります。
現金取引の場合は、決済場所はどこでもよく、一般的には不動産会社や銀行で権利証など書類の確認を行い、確認が出来次第、近場の金融機関に行き残代金を振り込みます。
当日中に売主の口座に着金確認できることが前提。さらに権利移転の手続き書類を、司法書士が法務局に持ち込むが、役所なので17時までしか開いていません。そのため、どんなに遅くとも13時過ぎ位までには手続きを終えておく必要があります。年度末や銀行が混んでいる日を避けて、決済日を段取りする不動産会社の如才なさが何より重要です。
【主な必要書類】
- 実印
- 印鑑証明書
- 評価証明書
- 権利証(*登記識別情報)
- カギ一式
- 測量図(*土地・戸建の場合)
決済が緊張する理由
不動産取引のクライマックスである決済は何度やっても緊張しますが、無事終わった後の解放感は格別です。不動産会社にとってもそれだけ緊張するのが決済です。緊張する要因として
「扱う金額が大きいから」
というのも確かにあります。一般の人が生涯で一番高い買い物が不動産です。それに携わる責任は重大です。
しかし、それ以外にも緊張する要因はあります。
決済はその日に合わせて多くの関係者が一堂に介するため、売主・買主含めて、スケジュール調整が重要です。お客さんが仕事をしていない人だったらまだしも、そんな人たちばかりではありません。銀行で融資を受けるには、金融機関が営業している平日でなければいけません。仕事の調整をつけて、午前半休を取得したり、貴重な有給を消化して、その日のために日程を合わせます。
その他にも売主・買主への当日準備するお金や、用意する書類や流れの説明、連絡。司法書士への必要書類の確認。銀行担当者とのお金の流れの確認などなど。
「決済は段取り8割、いや9割」
と言ってもいいくらいで、前日までに段取りを完璧にやっておけば、本来スムーズに行くのが普通です。・・・しかし、たった一つ落とし穴があります。それが
お客さんの忘れ物
です。
忘れ物があると、全員の都合を合わせて当日を迎えたにも関わらず、日程から何から何まで全て仕切り直しになってしまいます。特に多い忘れ物が以下。
- 権利証(登記識別情報)
- 身分証明書(特に免許を持ってない人)
- 通帳印(出金手続きが出来ない)
- 通帳(口座番号が分からないため支払口座や振込先が分からない)
これらは売主・買主に用意してもらうもので、間違いのないように不動産会社も事前にアナウンスします。場合によっては前日の夜に確認の連絡もしますが、こちらがどんなに万全を期したと思っていても、緊張のためか忘れるときは忘れてしまいます。
一見すると不動産会社に責任はないように思えます。ただ、取引を最後までまとめきるというのが、我々仲介業者の責務であり、その対価として仲介手数料が存在します。原因がお客さんの忘れ物だったとはいえ、取引を遂行できなかったということは、責任を果たしていないということです。
忘れ物を「させて」しまったのも、忘れないように伝えることが出来なかったのが悪いのです。だからどんなに万全に準備をしたと思っても、全てが終わってからでないと安心できないのです。
ですから、金額の大小ではなく、決済が終わった時の解放感はやはり格別なのです。それはきっと不動産を売却した売主、購入した買主、全員にとって素敵な瞬間であるはずべきで、そうなるよう努力するのが、不動産会社の大きな役目です。
補足:売却するには費用も掛かります
ただでは売れません。
人によっては税金もかかります
まとめ
長文、お疲れさまでした(笑)いかがだったでしょうか?すべてを理解する必要はありません。全体の流れ、不動産の売買がどのように進んでいくのかだけでもいいので、ぼんやり理解しておくと、慌てなくて済みます。
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おまけ
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