3種類ある媒介契約のうちの一つ。複数の不動産会社に売却を依頼できる。仲介業者は、営業活動報告を行う必要や、レインズへの登録義務もない。
一般媒介のメリット
売却の窓口を複数(いくらでも)作ることが出来るので、依頼された不動産会社がぼやぼやしてると、他社がさっさと売ってしまいます。良い方向に進めば、多数の不動産会社が他社に負けじと、積極的に販売活動を行うので、短期間で成約に至る可能性が高まります。
例え依頼した不動産会社のうちの一社が、あまり積極的に売却活動をしなかったとしても、競合他社が動いてますので、あまり影響はありません。
人気の地域や有名なマンションなんかだと、業者間の競争意欲を掻き立てるということで、(査定金額が間違っていなければ)一般媒介の受ける恩恵はそれなりにあると思います。
一般媒介のメリットは限定的
ただ、上記のようなメリットが生まれるのは、一般媒介だろうがなんだろうが、媒介契約を結びたいと思わせるような、人気のエリアや有名マンションです。なおかつ売出価格が適正で、情報を出せば早々に売れるであろうと判断された物件です。
ですから、
となると、じっくりと腰を据えて売却を行っていかなければならないため、短期間で競争意欲を掻き立ててといったような、一般媒介のメリットはほとんど期待できません。
かえってデメリットばかりになってしまいます。
一般媒介のデメリット
売れ残り物件と思われる
短期間であるならよいですが、3か月以上、同じ物件の情報が、複数の不動産会社から同時に出ていると、消費者は
「良く目につく物件」=「にも関わらず売れてない物件」=「売れ残り物件」
という三段論法で判断してしまいます。どんな商品でもそうですが、希少価値が感じられなくなると、途端に売れ行きは悪くなります。
不動産業者同志による足の引っ張り合い
媒介契約中の不動産会社が、互いに他社の動きをけん制しながら動くため、成約に至るための有意義な提案などはしてきません。
例えばA社、B社、C社の3社に依頼していたとします。売れない理由はいろいろあるので、一概にいえませんが、この場合、相場より金額が高いことが売れていない理由とします。
いつまでたっても売れないため、A社が値下げの提案を行い、売主がその提案に従って金額を下げたところ、B社で決まってしまったとします。
せっかく値下げ交渉を行ったにもかかわらず、余所の会社で決まってしまっては、A社としては他社の成約をアシストした結果になってしまい面白くありません。
また、仮にC社が値下げの提案をしてきたので、売主がA社、B社の意見を聞こうと相談したところ、
「まだちょっと早いのでは?C社さんのところはお客さんがいないのですかね?」
と、C社より上の立場に立っていたい、もしくはいい格好してほしくないために、根拠もなく反対してくる場合もあります。
専属や専任にみられるような、囲い込みの心配はありませんが、こうしたどうしようもない足の引っ張り合いもデメリットの一つです。
積極的に動かない
一般媒介ではすぐに売れない物件だと分かると、
「どうせ余所も販売してるから・・・」
と、積極的に販売活動を行わないところも多くあります。広告を出したりするにも費用は掛かりますが、他社で決まってしまっては、その広告費用の回収も出来ないからです。
メリットよりもデメリットの方が多くなってしまいましたが、もちろん一般媒介でも、一生懸命活動する不動産会社もあります。全ての不動産会社が当てはまるというわけではありません。
一般媒介の注意点
一般媒介だからこそのメリットを実感できるのは、販売を開始して1か月程度です。
しかし、1か月そこらでは売れずに、じりじりと焦りだしたときに陥りやすい考えが、
というものです。
こうした考えは全くの間違いです。
2,3社ならまだしも、4社5社、それ以上の不動産会社に依頼している物件は、どこの不動産会社も知っています。
「節操なく不動産会社に声かけている売主さんの物件」
として、マイナス面で有名になってしまいます。
そうなってしまうと、たとえ声をかけたとしても、形ばかり依頼を受けるだけでどこも一生懸命販売しない、ということになりかねません。
一般媒介は、何社にも依頼することはできますが、依頼するのはせいぜい3社程度に収めておくのが良いでしょう。
一般媒介から専属、専任への切り替えはできる
媒介契約の切り替えはいつでも可能です。
「信頼できる不動産会社に専任以上で依頼するのがベスト」
と、私は思っていますが、初対面の不動産会社に全幅の信頼を寄せていいものか迷ってしまう売主さんの気持ちも分かります。
ですからここは逆転の発想が必要です。つまり依頼をした複数の不動産会社のうち、一番マメに行動し報告してくれた一生懸命だった会社に、専属専任・専任媒介に切り替えるのです。
他社との競合にも関わらず一生懸命動いてくれた実績がありますし、不動産会社はその実績を売主が認めてくれたと意気に感じて、より一層力を入れて販売してくれることでしょう。
売り手がこうしたメリットとデメリットを理解しておくことが、何より重要なのではないかと思います。