A 将来的に売却、自己使用したいのであれば、定期借家賃貸借契約で結んでおいたほうがいいでしょう
何年後かは決まっていないが、将来的には売却、もしくは自宅として使用したいと考えているなら、念のため定期借家契約で結んでおくのがよいでしょう。
なぜなら入居者を貸し手の都合で退去させることは難しく、売却するとしたら入居者が住んでいる状態でのオーナーチェンジ物件として販売せざるを得ないからです。居住用物件と比べ、オーナーチェンジ物件は販売価格が安くなってしまいます。
オーナーチェンジのままでも売却できればそれでいいとお考えなら構いませんが、そう思う人はいないのではないのでしょうか。
定期借家契約とは?
定期借家契約は、契約期間ごとに一旦契約が終了します。ですから契約終了と同時に借り手に退去を要求できますし、入居者は居住権を盾に居座り続けることはできません。
【契約の延長は「再契約」という形で行う】
定期借家契約は、通常の賃貸借契約(*普通借家契約)と同様、契約期間を延長することが可能です。普通借家契約の場合、「更新」と呼ばれているものですが、定期借家契約の場合は「再契約」といいます。
厳密に契約を契約延長を行おうとすると、定期借家契約の契約が満了すると同時に、敷金の精算を行わなければなりません。しかし再契約の度に、いちいちそのような退去処理を行っていては貸主・借主ともに非常に面倒なので省略し、退去の際に行うことがほとんどです。
【条件の変更も可能】
再契約という名目ですが、実際は新規契約です。賃料や契約年数などを入居者と相談し、新たに設定し直すこともできます。礼金を新たに請求することもできますが、あまり誠意ある対応ではありませんし、実際そのようなオーナーさんにはいままでに出会ったことがありません。運が良かっただけかもしれませんが。
定期借家契約と普通借家契約の違い
例えば平成30年の1月1日に賃貸借契約を行った場合。
【普通借家契約】
何度更新を行ったとしても、原契約は平成30年の1月1日です。
【定期借家契約】
定期借家契約満了後、平成31年12月31日に2年の契約期間が満了後、平成32年1月1日を始期とする新しい契約を結んだとします。すると原契約は平成32年に締結した新しい契約が原契約となります。
つまり普通借家契約の場合、原契約がず~~~~っと続くことになりますが、定期借家契約の場合、ブツ切りとなります。図でみると分かりやすいかもしれません。
定期借家契約で結んでおくとよい理由
普通借家契約で賃貸契約を結んでしまうと、貸主の都合で出て行ってもらうことが困難です。借主としての義務を果たし続ける限りは、いつまでも住んでいてよいというのが普通借家契約です。
そのつもりで借りたはずなので、貸主の都合で出ていって欲しいといわれても、借主としてはなかなか承服できません。築いてきた生活もありますし、引っ越しに大きな労力と費用がかかってしまうからです。
一応、賃貸借契約書には、半年くらい前に貸主から告知すれば解約できる旨の記載がありますが、その記載を盾に一方的に退去してもらうことは至難の業です。
普通借家契約の場合、借り手に出て行ってもらうには、「お願い」するしかありません。新しい物件を借りる際の契約金や引っ越し代、場合によっては立ち退き料なども請求される可能性もあります。
ですから何年後かは分からないが、いずれは借り手に退去して欲しいのであれば、定期借家契約で結んでおくことが良いでしょう。
定期借家契約のデメリット
デメリットは一つだけ。賃料が普通借家契約に比べ、安くなるということです。
借り手にとって、期間中は住むことができるとはいえ、再契約できるかどうかの主導権は貸し手に握られた形です。再契約できる場合もありますが、出来ない場合は次の行先を決めなければなりません。
借り手にとっては大きなデメリットです。そのようなデメリットある物件を、普通借家契約と同じ賃料で募集したとしても、決まるはずがありません。
借り手に行動の制限を要求する代わりに、普通借家契約よりは安い賃料にすることで、定期借家契約で借り手が付くのです。
まとめ
賃料は安くしたくない!だけど売却時(*もしくは自己使用する場合は)には退去して欲しい!
と自分勝手な主張は認められません。昔大勢いた、上から目線のオーナーさんは当たり前のように言っていたようですが・・・。今はそんな時代ではありません。
衣・食・住の「住」を提供するには、高い公共性と責任、モラルが求められるのです。転勤などで急遽自宅を貸すようになった新規オーナーさんはご注意ください。