不動産仲介業大手の、野村不動産アーバンネットがタワーマンションの売主に対して、新しい売却方法の提案を始めていると、SUUMOジャーナルに記事がありました。内容はというと・・・
ホームステージング(Home Staging)とは、売却不動産を家具や小物で演出することで、早期に好条件での売却を目指す販売手法。中古住宅流通量の多いアメリカでは、過去30年以上、不動産売却時に有効な手法として用いられている。ホームステージングは、単にインテリアコーディネートをするのではなく、その住宅の購入を検討する方が、住まう価値と真の住まい心地を実感してもらえるように演出をすることが特徴。
中古住宅の売却においては、買主が内見をする際の第一印象が重要なポイントとなる。ホームステージングにより、良い印象を持ってもらうことが、好条件での売却につながる。また、買主にとっても住みかえ後の生活を具体的にイメージし易くなるなど、住まい選びの手助けとなる。(掲載元:SUUMOジャーナル)
以前、「不動産会社に売却を依頼後、売主が出来ることは何かありますか?」という記事を書きましたが、詳細はそちらを読んで頂くとして、基本的に売却に出してしまえば、売主が行動を起こしたことで早期に売却に至った、ということは絶対と言い切れませんが、ほとんどありません。
ただ、部屋を明るく見せるために室内の照明をすべてつけたり、清潔感を与えるように室内を整理整頓しておくなどの演出をすることは、売主が出来る数少ない行動です。もちろん、それをしたからといって、高く売れる、という訳ではありません。あくまでも、売りやすくするための、一つのスパイスとお考えください。上記のサービスは、部屋を綺麗にし限りなく買い手の印象を良くするという行為に、徹底的にフォーカスしたサービスなんでしょう。
費用は無料らしいですが、このサービスを利用するためには、色々と制限があるようです。まず一つに、このサービスは「タワーマンション限定」です。普通のマンションや一戸建ては適用外。タワーマンションは、どれも築浅のものがおおく、全ての部屋が、とは言いませんが、どの部屋も悪い印象を与える物件はないのではないかと。
さらに以下のような条件があります。
「相場より高いけど、部屋を綺麗に見せれば高く売れるかもしれない。そのためにこのサービスを使ってみようか」
と考える売り手さんが多いと思います。しかし、査定価格の125%以内という制限があるので、査定価格の125%以内に値付けしなければ使うことが出来ません。また、専属選任、専任媒介契約締結が条件です。一般媒介のように、他社に重ねて依頼をすることはできません。
ま、なんでもかんでも希望する人すべてこのサービスを適用していたら、サービスだけ受けて「やっぱりう~らない!」っていう人も出てくるだろうし、どこかで制限をかける必要はあるんのでしょう。
一見すると、売り手に向けてのサービスにみえますが、内容をよく見てみると、売れ筋物件(タワーマンション)を確実に売れる価格(査定価格125%以内)で値付けし、そうした物件の売り手を囲い込む(専属専任or専任媒介締結)、という非常にうまいやり方ですね。
なぜ、ただでできるかというと、タワーマンションはグレード感のあるものが多く高額です。室内を綺麗に見せるためのちょっとした作業など、仲介手数料の中から充分ペイできるから・・・という背景があるのだと思います。専属選任、専任媒介なので、売り手からの手数料は必ず確保できますし、新しい形の(不動産会社にとっての)広告料として考えれば悪くないですね。
さまざまな形のサービスが、手を変え品を変え出てきます。不動産業界だけの話ではないのかもしれませんが、そのサービスを始めるに至った背景にも、不動産オーナーは考えをめぐらせてみても良いのではないでしょうか。