名実ともに営業所でのトップ営業マンに
いつしか事務所内での私の立ち位置は、全国でもトップのエース営業マンに次ぐ、ナンバー2となっていました。ただ、エース営業マンの先輩は、既に営業マンではなく、徐々に管理職側に軸足を移してきていたので、実質的には私が営業所内ではトップの営業マンでした。
一人で扱う取引総額は年間25億円を超え、中途入社としては最短で役職者へ昇進。全社員のわずか数パーセントしか選ばれない社内表彰の常連となっていました。
常に成績上位者に名前を連ねるまでに躍進していたので、他の営業所でも私を知らない人はおらず、ちょっとした有名人です。投資用マンションを購入するまでになり、人に驚かれるほどの収入も手にするようになりました。
入社当時はノルマ達成ができず、所長から辛辣な言葉を投げかけられ、いつ辞めようとばかり考えていましたが、いつのまにか何も言われなくなりました。買い取り業者や取引に関与する司法書士や土地家屋調査士、リフォーム会社の社長などからたびたび会食に誘われ、大いにチヤホヤされ、あらゆる人の私を見る目がいつのまにか変わっていました。
なりたくない姿の不動産営業マンに。。。
急激に躍進する自分の営業数字と比例するように周りの環境が変わっていったので、多少の気恥ずかしさと違和感を感じながらも正直悪い気はしません。実際、私の鼻は伸び切っていました。
いつの間にか自分のノルマを積み重ねることだけ考えるようになり、すぐに数字に結びつくような案件しかこなさなくなりました。
以前は一生懸命取り組んでいた、時間がかかりそうなお客さんの仕事は後回し、依頼してくれたお客さんの方ではなく、会社の数字と自分のノルマしか考えなくなっている自分にある時気づき愕然としたことを覚えています。
と、入社当初、ノルマ達成に躍起になって働く営業マンをみて感じた「なりたくない不動産営業マン」に、私がなってしまっていたのです。
さらには辞めたい辞めたいと思っていた会社が、居心地よいものにも思いはじめていました!
このタイミングでそのように思えたのは、まだ社歴が浅く、まだ完全にその会社にどっぷり足を突っ込んでなかったからだと思います。
そもそもこの会社に入った目的は、短期間で大手不動産会社の仕事のやりかたを覚えることでした。
4年在籍し、様々な案件と充分な実績を残すことが出来た今、もうこの会社にいる必要はありません。居心地の良さに後ろ髪を思いっきり引っ張られながら、ある日、入社当時から散々言われ続けてきた所長に辞めることを伝えたのです。
所長に辞めることを伝える
私から改まって話があると言われた時には、既になんの話だか分かっていたはずです。いつものようにむっつりした様子で眉間にしわを寄せながら、辞める旨を伝えた私にこう話し始めました。
厳しい言葉をあびせられ続けてきた相手に、ようやく認めてもらった嬉しさと、常に辞めることばかり考えた当時のことを走馬灯のように思い出し、不覚にも涙がにじみました。所長の顔をみてしまったら涙があふれだしてしまいそうだったので、直視することができません。
嬉しかったです。でも、それで辞めることを撤回するほど、甘い気持ちで伝えた訳ではありません。
こうして辞めたいとばかり思っていた会社を、180度違った気持ちで退職することになりました。ちょっとした勘違いと共に。
↓ちょっとした勘違い
まとめて読みたければ
私が不動産会社で働き、もがきながら成長していく中で学んだ仕事術や考え方を一冊にまとめたビジネス書です。出版して4年が経ちますが、書いた自分が読んでみても、面白く読むことができます。
ご興味あればこの機会にぜひ!