第三希望にもかすりもしない配属先
「第三希望までには入りますから」
と、入社が決まった際、そう話す人事部長の言葉を真に受け、その当時住んでいた近隣三ヶ所の営業所勤務の希望を出しました。
結婚してわずか数年しか住んだことしかないエリアでしたが、土地勘も多少なりともできてきたし、その会社の営業所がある場所も以前から知っていました。帰りが遅くなったとしても、帰るのに便利だなあと思っていたのですが・・・。
ところが配属されたのは、行ったところもない神奈川県のとある駅にある営業所。かすりもしていません。
「話が違うじゃないですか」
と、文句を言う相手がすぐ近くにいれば、一言二言言いたいところですが、こちらはあくまで入社させて頂く身分です。例えそう思ったとしても、従わざるを得ません。会社員の悲哀を感じたのは、新卒で入社した会社以来2度目のことです。
入社初日、配属先に足を踏み入れる
入社式のあったその日。28歳になって2ヶ月が経過していました。入社式を済ませたその足で配属先へ向かいました。
配属先に到着し、営業所の責任者(所長)とまずは面談を行うことになっていました。入社初日、しかも初めての不動産業。全くの異分野です。いままでに職を転々としてきた当時の私。入社初日の緊張など慣れたものでしたが、そんな私でもこの時ばかりはさすがにド緊張していました。
そんな子羊のように震える新入社員を、少しは和やかな雰囲気で迎えてくれることを期待していたのですが、事務員の女性に通された応接室に入って来た所長を見て、そのような甘い期待は見事に打ち砕かれました。
所長にビビる
応接室に入ってきたのは年齢60に行くか行かないかのオジサン。しかし、今まで見てきた
「普通のおじさん」
「普通の会社員」
というステレオタイプにはどうみても当てはまりません。
所長の表情は、常に不機嫌なことが身の回りに巻き起こっているのか、眉間には深いしわが刻まれ、タフな交渉をくぐりぬけてきた経験からか、醸しだすオーラが一般サラリーマンとは明らかに違います。
なにより髪はオールバック、ポマードで塗り固められていて、正直かなりビビりました。
「見た目は怖いけど、実は優しい」
みたいなギャップに萌える女子が多いようですが、少し会話をした限り、この所長に関しては残念ながら見たまんまでした。
「不動産営業マンとして~」を説かれる
大きな椅子にふんぞり返り、足を組みながらおもむろに煙草に火をつけ、
「不動産営業マンとは」
について、酒焼けした声で私に説き始めました。そこで語られたのは、私にとっては未知の領域である衝撃的なセリフの数々。
【営業は兵隊だ!】
と聞かれた当時の私は、青臭い理想を口にした。
【靴の踵をどれだけすり減らしたが勝負だ!】
何か聞きたいことはあるか?と聞くので、
と質問したところ
【女を口説けない奴が不動産なんか売れるか!】
所長からは、昔の武勇伝を聞かせてくれた。嬉しそうに話す所長の表情には人間味があふれ、私がいうのもなんですが、可愛らしく感じたものです。
それが理由で少し砕けた雰囲気になったものの、緊張で私の手のひらは汗でびっしょり。
見るべきでなかった情報
実は入社前、興味本位で、インターネットを見て回っていました。
その時見た情報は、どれもが入社意欲をなえさせるものばかりで、入社を後押しするようなコメントは皆無でした。
「上司がタバコ吹かしながら灰皿投げつけてきて、額から血が出ました」
ってコメントを見た時にはドン引きしました。
その時には既に入社が決まっていたため、後戻りはできません。もっと早く見ておくべきだと後悔したものです。
と入社前の不安な気持ちを、無理やりねじ伏せて初日に臨んだのです。
しかし所長との面談で、掲示板に書かれていたことが誇張でもなんでもなく、恐らく本当のことなのだと認識できてしまいました。
所長がタバコ吹かしながら灰皿投げつける姿ってメッチャイメージとピッタリですし。。。
と不安だらけだったことを今でも鮮明に思い出せます。
まとめて読みたければ
私が不動産会社で働き、もがきながら成長していく中で学んだ仕事術や考え方を一冊にまとめたビジネス書です。出版して4年が経ちますが、書いた自分が読んでみても、面白く読むことができます。
ご興味あればこの機会にぜひ!