不動産を買ったことがないことに後ろめたさを感じた日
ある日、購入の申し込みをもらい、ホッした雰囲気の中、お客様と雑談していたところ、こんな質問をされました。
「楯岡さんは不動産持ってるんですか?」
と。当然、まだ持っていなかったので、
「え!?・・・いや、まだ持ってません・・・。」
と事実をそのまま話しました。
「いい物件があったら自分が買うことよりも、お客さんに紹介したくなるんですよ」
とお客さんは何の気なしに聞いただけなのでしょうが、不動産売買仲介を仕事にしているにも関わらず、自分で不動産を買ったことがないことに、ある種の後ろめたさを以前から感じていた私は、上記のような弁解をしてしまいました。
みんな自社商品を利用している
不動産仲介業の商品は不動産です。同じ商品は2つとしてありません。ですから例えが適切かどうかはわかりませんが、保険会社の営業マンを考えてみましょう。
保険加入を勧める営業マンは、ほとんどの人が、自分自身でも自社の保険商品に加入しています。お客さんには自社の保険商品を勧めているのに、自分では他社の保険会社の商品に入っていると聞かされたら、加入しようとは思わないでしょう。
ハウスメーカーはどうでしょう?家を建てるときには、自社で建築する人が多いですが、ライバルメーカーで建築しているのを聞かされたらどうでしょう?
程度の差はあれ、自社商品を自らの手で利用することで、その良さや使い勝手が理解でき、お客さんに自信を持って勧めることができるのです。
当時の私は、不動産の売買仲介を日常業務としているはずなのに、自分自身が不動産を買ったこともないし、もちろん売ったこともありませんでした。
「これでお客さんの購入や売却の手伝いをする資格はあるのだろうか?」
と強く思い始めていました。いつか機会があれば、(しかもそう遠くない未来に)自分で不動産を買おうと、この時に密かに決心していました。
投資用マンションを購入
入社当初は何千万もの高額商品である不動産を扱うことにかなりビビッていましたが、月に何件も契約をしているとそれも当たり前となり、自分が不動産を買うことに対して、抵抗はまったくありませんでした。
とはいえ、いきなり何千万もの融資を受けて、自宅を購入することは考えられなかったので、ひとまずは数百万程度の投資用マンションを購入することにしたのです。
投資用マンションで何より重要なことは、駅からの距離と利回りです。さーっとレインズを見て回り、駅から近く利回りもよい、築年数もそれなりのワンルームマンションが目につきました。手ごろとはいえ、高級外車位の金額はします。
物件の詳細を調べてみたところ、特に問題があるわけではありませんでした。金融機関にローンを打診してみましたが、こちらも問題なし。賃料で月の返済を支払うことができ、月数万円の利益も出ます。購入計画としては悪くありません。
「購入には直観と思い切りが必要ですよ」
と、日頃お客さんに伝えていることもあり、その自分の言葉に則り、この物件を購入しようと決めたのです。
まとめ
不動産仲介業を仕事としてるため、一般のお客さんより購入のハードルは低かったかもしれません。しかし、実際に自分で不動産を購入してみると、
「既に不動産を所有している」
と、これから不動産を購入しようとしている人にとっては「先輩」であり、その立場が自分自身、余裕を感じることができ、いままでより自信を持って話をすることができるようになりました。
不動産の売買仲介の仕事に携わる立場としても、また、はじめての投資家デビューとしてもとてもよい買い物だったと思います。
その後、このマンションは売却しましたが、幸いにも購入した時の価格とほぼ変わらない価格で売却することができたので、賃貸経営にかかった費用を考えても、損どころかかなり得をしました。
余談ですが、購入の時の仲介は当然自社で行い、しっかりと仲介手数料もお支払いしましたよ。ま、いいんですけどね。
やっぱり人に勧めるからには、自分自身がその立場に立ってみるのが一番ですね。
まとめて読みたければ
私が不動産会社で働き、もがきながら成長していく中で学んだ仕事術や考え方を一冊にまとめたビジネス書です。出版して4年が経ちますが、書いた自分が読んでみても、面白く読むことができます。
ご興味あればこの機会にぜひ!