人事異動に伴って、転勤で自宅を貸すことになった新人オーナーさんもこの時期は多いかと思います。当社にも数組ご相談がありましたが、自宅を貸す際には注意しなければならないポイントがあります。今回はそのポイントについて解説していきます。
貸す前に室内のメンテナンスが必要
自分たちの荷物を運び出せば、そのままの状態ですぐに貸しに出せるといったらそうではありません。専門業者による最低限のハウスクリーニングは必須ですし、クロスや床の目立つ傷や汚れは直した方がいいでしょう。
室内をピカピカにする必要はありませんが、清潔感は与えられるようにしましょう。これから住む人たちには、前入居者の存在はできるだけ感じさせない方がいいのです。
(住宅ローン利用者は)金融機関へ報告
住宅ローンを返済中であれば、金融機関に転勤になって、貸すことになった旨を報告しなければなりません。勝手に貸してしまうと、のちのちトラブルになることもあります。
「金融機関にバレっこないです、大丈夫です」
と、いい加減なアドバイスをする不動産会社もありますが、とんでもないことです!金融機関には必ずバレます。
年に何度か、金融機関からローン利用者に残高証明書などの通知物が配送されます。金融機関が把握している住所に住んでいないと、当然宛先不明で送付先の金融機関に戻ってきます。このタイミングで、住んでいないことが把握されます。
金融機関は住宅の用として使うためのローンとして、史上まれにみる超低金利で融資をしています。それをいいことに、中には住宅ローンを利用して最初から投資目的で購入する悪意のある人もいます。転勤が理由ですから、悪意はなかったかもしれませんが、融資している金融機関としては不信感を感じてしまいます。
転勤が理由の賃貸については、どの金融機関も比較的寛大なようなので、正直に報告してスッキリした気持ちで赴任してください。
契約形態(普通借家契約か定期借家契約か)
「数年後、帰ってきたら、すぐ自宅に戻れる」
と思っていたら大間違いです。
一般的な賃貸借契約(普通借家契約)では、オーナー都合で入居者に退去してもらうことが、基本、できません。契約書には大抵
「6か月前に告知すれば解約可能」
と記載がありますが、それを見て安心するかもしれません。しかし、賃料を払い続けている限り、入居者には居住権が発生しています。退去してくれと訴えたとしても、
「イヤだ」
とオーナーに言えてしまうのです。
「次回は更新しない!」
とオーナーが言ったとしても、当初契約が生き続けるので、そのまま住み続けることができてしまいます。言いかたは適切ではないかもしれませんが、賃料を払い続けている限り、居座り続けられるのが普通借家契約です。入居者は「弱者」とみなされるので、法律で強く保護されているのです。
それでも、どうしても退去して欲しい時には、立ち退き料を払って、
「お願いして」
退去してもらわなければなりません。ですから帰ってきたら住みたいと考えているなら、最初から、
定期借家契約
で賃貸借契約を結ぶ必要があります。
定期借家契約とは?そのメリットとデメリット
定期借家契約には更新がなく、契約期間満了と同時に契約が終了します。契約が満了すれば、「更新」ではなく、「再契約」をしなければ入居者は住み続けることができません。定期借家契約であれば、上で解説した普通借家契約と違って、入居者は居座り続けることはできません。
ただ、入居者にとって長く住み続けられる保証がない物件の評価は、周囲の物件と比べて低くなってしまうのは当然です。いつ契約満了を理由に、退去を迫られるか分からないし、生活が落ち着かないものになってしまいます。
ですから、定期借家契約は、普通借家契約に比べて、安めの賃料設定にしなければ、なかなか入居者が決まらないという側面もあります。
また、定期借家契約とはいえ、契約満了を待たずして、退去を迫ることはできません。
オーナーに都合の良い契約は交わせない
普通借家契約であろうが、定期借家契約だろうが、生活の場を提供し賃料を受け取るには、オーナーにも多少なりとも行動の制限を迫るともいえます。
- 相場なりに貸せるが、いつ貸した自宅に戻れるか分からない
- 契約満了を機に戻れるが、賃料は安くなる
極論すると、どちらを選びますか?ということになります。
「相場なりで貸せて、自分が戻りたい時に戻れる」
なんて都合のよい契約などありません。よくご家族で話し合って、どちらで契約を交わすか決めるようにしてください。
まとめ
以上、「転勤で自宅を貸す場合の3つの注意点」でした。いかがでしたか?3つのうちの下2つは、意外にアドバイスしない不動産会社が多いようです。どれも知っていれば問題ないけど、知らなかったら困るポイントです。自宅を貸す場合には十分注意しましょう。