先日の記事「売主が、売却中に出来る効果的なこととは?」で紹介したものと似た内容のサービスを、東急リバブルさんが11月1日から行っているそうです。その内容を以下、抜粋します。
東急リバブルは11月1日、『リバブル無料建物メンテナンス』サービスを開始した。マンション・一戸建ての玄関ドアやサッシの異音や隙間、フローリングの傷やクロスのめくれなど、住居の細かな不具合を無料でメンテナンスしてから売却できる。
<中略>
売主が抱える「自宅を売却したいけれど、購入から何年も経っているので細かなところがあちこち壊れている」「気づいてはいるけど売り物件にわざわざお金をかけるのももったいない」「このままで本当に売れるのだろうか」などの悩みに答えるのがこのサービスだ。
『リバブル無料建物メンテナンス』サービスでは、住居の細かな不具合を無料でメンテナンスしてから売却することが可能である。対象物件は、自己居住用のマンションまたは一戸建て(瑕疵担保責任免責不動産および事業用不動産を除く)。(引用元:RBB TODAY)
というものです。
2014年8月に実施した「不動産売買経験者へのインターネット調査」の結果、48%売主側が「ちょっとした不具合を理由に値引きを要求されるのではないかと不安だった」とあり、さらに42%買主が「中古住宅を内覧した際に、建具のがたつきや不具合が原因で買うのをやめたことがある」と答えている。
このアンケート結果を踏まえた形で開始した今回のサービスのようですが、「玄関ドアやサッシの異音や隙間、フローリングの傷やクロスのめくれなど、住居の細かな不具合」が原因で、購入を取りやめる人など本当にいるのでしょうか?
個人的な経験ですが、修繕に数百万単位でかかる大がかりなものなら話は別ですが、こうした細かな劣化が原因で、「やっぱり買わない」となることって、そうそう多くはないと思うのです。修繕費用も数万単位です。「その程度の費用」と言ってしまっていいのか分かりませんが、さんざん検討して気に入った物件を、その程度の費用で諦めてしまう人が半分もいるのかと、率直に疑問に思ってしまいました。
もちろん、そうした人もいるのでしょうが、きっと辞める背景にはそれ以前に色々溜めていたものがあったのかもしれません。例えば、仲介業者の態度が気に食わない・・・売り手の対応が気に食わない・・・修繕をお願いしたけどあっさりと断られた・・・などなど。
物件はと~~~~っても気に入っているけど・・・どうしても気持ちがおさまらない!気持ち悪い!もやもやする!と、感情的になってしまうお客さんはいます。きっかけは確かに「中古住宅を内覧した際に、建具のがたつきや不具合が原因で・・・」なのかもしれませんが、感情的になってしまえば、どんな些細なことでも取引を辞める材料になり得ますからね。だから本当に42%の人が「それ」だけの理由で購入を見合わせてしまうのかな?と疑問に思ってしまったのです。
ちなみにこのサービスを受けるための条件ですが、
となります。「タワーマンション限定」という箇所以外は、適用条件は前回ご紹介したサービスと、ほぼ同じですね。要するに、
「売却行為以外にこのような付加価値もつけるので、売りやすい価格(査定価格の125%以内)で当社1社(専属専任or専任媒介)だけに販売させてくださいね」
という、良質な売り手さんを確保するための一つの手段です。
別にこうしたサービスを受けられることをきっかけに、売却に踏み込むことは悪いことではありません。売り手が考えてた希望売却価格が、提示された査定価格の125%以内に収まるのであれば、活用するべきだと思います。余計な費用もかかりませんしね。
問題は売却希望価格と、査定価格にかい離がある場合です。希望価格では相場から比べたら高いかもしれません。だけど、難しいと分かっていても、一度は確かめてみたい!と思うのが売主心理ではないですか?提示された査定価格は確率論で、絶対ではありません。市場にどう受け入れられるかは「やってみないとわからない」というのが正直なところです。
希望する売却価格とどれだけの差があるかを、客観的に認識するため、査定価格を参考にすることは重要です。しかし、こうしたサービスを受けたいがために、売主希望の売却価格を無理に125%以内に収める必要はないと思います。それでは本末転倒です。このようなサービスを提供する背景には、上記のような理由があり、決して「他にはないサービス」ではないという認識だけは持っておいてください。最後に、
対象エリアは、東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県、大阪府、京都府、兵庫県、奈良県、和歌山県、滋賀県。建物内部の建具やサッシなど、同社の定める箇所の目視・打診、動作確認などを行い、同社の定める基準に基づきメンテナンスを行う。
ということなので、基本的にどんな物件(マンション、一戸建て)でも適用できるのでしょうが、あんまりにも痛みが激しい物件だと、「同社の定める基準」に基づき、適用できないこともあるんでしょう。
大手2社が同じようなサービスの提供を始めています。その他の不動産仲介業者がどういう対応を取るのか、今後が非常に気になりますね。