この言葉は本当に良く耳にする。
社会人デビューをする、
どこで聞いたかは分からないが、
のどに刺さった魚の骨のように、
20代そこそこのボクの心にもしっかりと残されていた。
まさに様々な場面で語られる、
ビジネスマンとしての「名言」「鉄板ネタ」なのだろう。
新卒で入った会社(ソフトウェア開発)から、
不動産業界に転身するまでの間在籍した会社(デザイン事務所)では、
基本的になんらかの仕事が上から回されてきた。
その仕事をそつなくこなすのは当然だが、
言われたことだけではなく、
ほんの少し自分なりのスパイスを効かし、
やる気を見せることが社内での評価を上げる秘訣だ。
その評価が新たな仕事を回されさらなる評価につながる・・・
ということが、
「仕事は自分で作り出す」
という言葉の意味・本質だと思っていた。
今でも新規の案件の7割から8割は、
以前一緒に仕事をした人からの紹介だ。
紹介されるということは、
以前の仕事が、ある程度は評価されたと考えることもできるのだろう。
だから間違ってはいないと思う。
しかし、ボクの本の中で描かれている、
修業時代にボクが入った会社では全く違った!
何が違うかというと、基本的に仕事は一切回されない。
もちろん先輩から雑用を任されることはあった。
なので当時の何も知らない幸せなボクは、
その雑用をそつなくこなすことが社内での評価につながるのだ・・・
と大きな勘違いをしていた。
しかし、雑用をいくら一生懸命やっても評価にはつながらないのが、
その会社での現実だった。
では一体なにをもって評価されるのか?というと、
営業成績でしかないのだ。
さらにさらに!
営業成績に繋がるようなネタ、お客さん、物件を、
会社が用意してくれる訳ではない。
本当に全て、ゼロから自分で集めるしかなかった。
遅まきながらこの事実に気づいたときは愕然とした。
「こんなシビアな会社があるのか?」
と。営業会社の厳しさを全く知らなかったボクには、
カルチャーショック意外のなにものでもなかった。
ボクをボコボコにしていた上司は、
「お前たちは大企業の看板を使って仕事をする個人事業主だ!」
「今月利益を上げないと自分の会社が倒産するとしても、
今のようにのんびり働くのか!?」
と、月末、朝礼で良くこう言って、
営業所員の尻を思いっきりひっぱたいていた。
「自営業って・・・。会社員として入ったんだが・・・?」
その時は途方に暮れたボクだが、
自営業となった今なら上司の言うことは確かに理解できる。
しかし、会社から回される仕事をこなす労働の対価として、
給料をもらおうと思って入ってくる人にとっては、
厳しすぎる環境であることに間違いはない。
だけど、こうした厳しい意味での、
「仕事は自分で作り出す」
ということが心底理解できていれば、
実際に独立・起業したときに効いてくる仕事の本質ではないかと思う。
会社で仕事を作り出せない人が、
独立し会社の看板を外してから、
仕事を作り出せるはずはない。
厳しい環境だったが、まさに独立独歩の自営業者のように、
毎月のノルマを必死になって追いかけていたトップ営業マンは、
今では一国一城の主となっている人が多い。
仮に独立しなかったとしても、
独立自尊の精神で社内で働くことは、
評価を劇的にあげる大きなきっかけとなることに間違いない。
20代前半のボクのように、鼻をほじりながら、
「仕事は会社が振ってくるんだから、
それまでおとなしく待ってればいいんだよ。」
とアホな顔して、
たいした努力も勉強もせず、
ただボケーッと待っているような無為な時間を過ごすことだけは、
止めて欲しいと切に願う。
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