新人に優しい世界

先日、高校時代からの友人に、

 

「両親と同居するための家を買うことになった、

来週契約なのだが、気を付けるべきことを教えて欲しい。」

 

との相談があった。

 

で、色々アドバイスしたのだが、

話を聞くと、今回契約を担当している営業マンは新人で、

今回が初めての契約なんだそう。

不満げに語る友人にボクは、

 

「多少至らない点があるかもしれないけど、

優しくしてあげてよ(笑)」

 

と冗談半分に話し、さらに、

 

「きっとその営業マンにとっては、今回の契約は一生忘れられない経験で、

キミのことは生涯忘れることはないよ。

人の記憶に自分の存在を刻み付ける経験って、

そうそう出来ることじゃないよ」

 

と、半分以上大真面目で語った。

 

かくいうボクも初契約のことは今でも鮮明に思い出すことが出来る。

売主さんのことも買主さんのことも。

平成16年の10月だったか11月だったか。

ちょうど今の季節みたいな、

コートをそろそろ引っ張り出さなければいけないような寒い時期だった。

契約が決まった嬉しさよりも、

ちゃんと最後まで進めていけるかどうかのプレッシャーの方が大きかったのを覚えている。

 

ある日、ボクのたどたどしい進め方を察したのか、

 

お客さん:「楯岡さんは経験どれくらいあるの?」

 

と聞かれた。この「経験」が女性経験の数を指すことではないことぐらい、

新人のボクでも分かる。当然不動産売買の経験のことだ。

「実は・・・今回が初めての契約で・・・」と、

正直に伝えたらなめられる、頼りない、と思われることを恐れたボクは、

 

ボク:「あまり経験はないですけど・・・1年半くらいですかね~」

 

とかなり「盛った」。

1年半経って、このときのようなたどたどしい進め方をしている方が、

それこそ

 

「過去の経験から何も学べないただのボンクラです」

 

と公言しているようなものなのだが、

その時には気づかなかった。

 

幸いそれ以上、キャリアについて突っ込まれることはなかったが、

ボク自身にたいした経験がないこと位は、

売り手さんも買い手さんも分かっていたと思う。

 

業務に手を抜いたことはない(はず)。

分からないことやどう進めたらいいのかは、

都度先輩に聞いて、極力粗相のないよう、

進めてきたつもりだった。

 

だけど、経験不足からくる不手際はどうしても出てくる。

何が分からないのかが分からないので、

先輩に聞けば解決できるものばかりではない、

想定外のこともある。

 

たった1件の案件のためだけに、

様々な問題(実際はたいしたことではない)に直面し、

プレッシャーにさらされ続けた。

そしてボクの不手際によってつもりつもった不満から、

お客さんからもかなり叱られた。

しかも取り引きが終わった後にも怒られた。。。

全てがひと段落済んだあと、

 

「やっと数字を作れた!」

 

という嬉しさよりも、

 

「やっと終わった・・・」

 

と、本当にぐったりしたのを覚えている。

 

今回、ボクの友人に伝えた

 

「優しくしてあげて」

 

という意図には、なにも

 

「不満があっても何も言わず我慢してあげて」

 

ということではない。

契約1件を「ちょろいな」と思わせないで欲しいな、という意図がある。

最初の一件でどのような経験をするかで、

今後どう成長していくかが決まってくると思っている。

 

初めてのことはどんなことにもストレスがかかるしプレッシャーもある。

それを今回の新人君に分かってもらえるような対応をして欲しい、

という個人的な見解であり、友人だからこそ言える勝手な希望。

 

お金を払うのはお客さんだ。

本来、そんなことに気を揉む必要はないし、

プロとしての業務を遂行してこその報酬だ。

新人だから・・・というのは理由にならないのは分かってる。

だけど、誰もが最初は新人。

プロとしての業務を遂行できなかった時期が、

多かれ少なかれ誰にでもあるはず。

 

自分が新人だった頃を思い出し、

厳しくしかし優しい気持ちで新人の業務を見守る。

それは新人だけが受け取れる、数少ない特権なんだと思う。

そんな優しい世界を夢想した3連休初日。

 

ボクにはいつでも優しくしてほしいけど。

 

 

 

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