知り合いの弁護士さんや司法書士さんが主宰する勉強会で
「家族信託」
について学んできました。私自身、不動産売却相談や賃貸オーナーから相談を受けることがある程度で、実際に家族信託を利用して不動産取引業務を行ったことはありません。持っている知識が大きく間違ってはいないものの、成年後見制度との違いや実務的なこと含めてあまり分かっていないということもあり、参加致しました。
家族信託についてざっくりと解説、というより私自身が
「家族信託を結んでおけばよかったなあ」
と感じた際のエピソードをお話しようと思います。
家族信託とは何か?
ご高齢の賃貸オーナーAさんがいらっしゃいました。Aさんは以前から、高齢を理由にこれ以上賃貸経営を続けるのが厳しいので売却をお考えでした。ただ、厳しいといっても、大変なのは確定申告の時期のみで、年の大半は当社が管理していることもあり、それほどAさん自身、労力を費やすことはありませんでしたし、毎月決まった家賃も入って来ていたので、ついつい先延ばしにしてしまっていました。
ある日、Aさんが突然倒れてしまいました。不幸中の幸いで意識は取り戻しましたが、会話することができなくなってしまったのです。Aさんがこうなってしまった以上、ご家族は賃貸物件の処分をご希望されましたが、ここで問題が発生します。
不動産の売却をするにあたって、所有者本人であるという確認と、本人の売却の意思表示というものが絶対に必要です。Aさんは「うんうん」と家族の問いかけにうなずきますが、果たして本当に理解してうなずいているのか誰にも分かりません。つまり本人に売却の意思表示があるのかないのかの確認ができないということです。
ということは・・・
ご家族がどれだけ売却を望んでも、売却できない!
ということになってしまうのです。
以上のケース以外にも、物件所有者が認知症になってしまった場合も同様です。周りの親族がどれだけ売却を望んでも、正確な本人の意思表示がなければ(*確認が取れなければ)、売却することはできません。
上記は大分以前の話ですが、この時はじめて家族信託を利用した、不動産取引時の有効性を実感しました。もし、健全な判断能力があるときにAさんと親族のどなたかが家族信託を結んでおけば、本人に代わって、売却の手続きを行うことが出来たのです。不動産についてのみ言及していますが、家族信託は財産(*不動産)の処分や活用についての判断を、委託する人に全面的に任せてしまうことです。
成年後見制度との違い
違いは色々ありますが、その中の一つ。成年後見制度では家庭裁判所の許可が必要ですが、家族信託の場合は、本人同士が同意すれば(*手続きは必要ですが)OK。「家族」とありますが、別に中の良い友達でもOKです。財産(*不動産)の管理を一任するので、なにより委任者と受任者との間に強い信頼関係が必要であり、そのような信頼関係があるかないか?が、家族信託の最も重要なポイントです。自分の親族ならば、強い信頼関係がある場合が多いと思うので、その点においては成年後見制度よりも使いやすいかなと感じました。
なぜなら、成年後見制度では、自分が希望した人(*例えば自分の子ども)が、必ず受任者になれるかは分からないのです。7割方、弁護士・司法書士が選任されてしまうそうで、意に反して自分の望んだ人が受任者になれなかったからといって、取り下げることはできません。
その他、成年後見制度との違いは色々あるのですが、私もまだそこまで理解しているわけではないので、まずはこの辺りまで。
まとめ
いかがでしたでしょうか?以上は勉強会で学んだことのほんの一部に過ぎません。実務的な話や税金の話も含めると、まだまだ分からないことが多いです。不動産の処分や管理をする際に、絡んでくる話ではありますから、継続的に学んでいくべき必要があると感じました。