営業マン時代、同じ事務所で働く表彰式の常連、
スーパー営業マンとして有名なSさんは、
ある日お客さんからの問い合わせの電話を取り、
数分話した後アポイントを取り、
電話を切るなりこう言った。
Sさん:「よっしゃ!これは契約だ!」
もちろんその段階で詳しい相談の内容を把握していたわけではない。
思うように数字が伸びていない事務所に景気を付けるための発言だったのかもしれない。
しかし、Sさんはその後、本当に月内に契約してしまった。
日々、上司からのプレッシャーと暴言にさらされ、
ボロボロになりながらハロウィンでもないのに、
ゾンビのように案件を求めて担当エリアをフラフラと徘徊を続けるボクには、
その先輩がまぶしく映った。
だって電話でちょっと話しただけで、
「これは契約になる案件だ!」
って分かってしまうんだから、そんないいことったらない。
そんなSさんを羨望のまなざしで眺めながら、
ボク:「なんで電話で話しただけで契約できるかどうかまで分かるんですか!?」
と、不公平感まるだしで聞いたことがある。
Sさん:「電話の声の大きさ、滑舌、トーン、抑揚の付け方である程度お客さんのイメージはつけられる。もちろん100%じゃないけど、今までの経験で、8~9割は大体イメージ通りだな。」
と煙草をふかしながらSさんはそう言った。
ボク:「でもイメージが分かっただけじゃ、仕事になるかならないかまでは分からないんじゃないですか。」
Sさん:「イメージが浮かぶだけで、俺と合うお客さんかどうかが分かるんだよ。今回のお客さんには俺のようなタイプが一番だと思ったんだ。ああ、お前じゃだめだな」
ボク:「え?ど、どういうことですか!?」
少しむっとするボク。
トップ営業マンにもかかわらず、
ただのペーペー社員の一見無礼な態度も全く気にしない、
懐のでかさを持つSさんは、
無礼なボクをバッサリと一刀両断。
Sさん:「まずお前は俺のような強引さがない。」
ボク:「・・・・」
Sさん:「あと経験が少ないからかな、雰囲気がなんだか頼りないんだよ。自信がないっつうかさ」
ボク:「・・・・」
Sさん:「今回のお客さんは、多少強引でも、グイグイ先導していくようなリーダーシップ溢れる営業マンが良かったんだよ。つまり俺のような人間ってこと。」
ボク:「雰囲気って・・・じゃあいつまでたってもSさんみたいにはなれないってことじゃないですか!?なんか・・・ここぞとばかりにボクのディスってません(涙)?」
Sさん:「違う違う。俺のようになろうとしたって無駄だってこと。俺とお前じゃタイプが最初からまるっきり違うんだ。俺のマネをするより、自分がどんなタイプの人間なのかをよ~~~く考えておくんだな。そうすればお前のタイプに合うお客さんがどういう人なのかが分かってくるって。」
ボク:「・・・自分のタイプ・・・ですか。考えたことなかったですね。敵を知るにはまずは自分からってことですか?」
Sさん:「そんなところかな?お前は俺にはなれない。だけど俺もお前にはなれないんだよ。」
ボク:「なるほど!『みんな違ってみんないい』(by 金子みすず)ですね!」
S:「・・・それは良く知らんけど・・・」
この時の会話をきっかけにして、
ボクは今まで自分なりにうまくこなすことができたと思う案件のお客さんのことを思い出してみた。
するとそこにはある共通点があったのだ!
初めて自分自身の「型・タイプ」を、
お客さんの目を通して見つめることにしたのだ。
それからというもの、
自分のタイプを心に留めながら、
常にお客さんのことも観察しながら営業を行うことで、
Sさんまでとはいかずとも、
「このお客さんはいけるんじゃないか!?」
と、なんとなく浅いレベルでは認識することが出来るようになったのだ。
営業、というかお客さんを相手にするビジネスに一番必要なこと、
それは徹底的な自己分析を行うこと、これに尽きる。
営業のノウハウ本を読むよりは、
よっぽど効果的だと今ではそう考えているがどうだろう。
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