一括借り上げの落とし穴

「○○年一括借り上げ」

と、テレビCMなどでも大々的に謳っている業者も多い「一括借り上げ」ですが、トラブルが増えています。

これから建物を建てるオーナーにしてみたら、入居者が入る・入らないは死活問題。入居者が入る前提で、土地を担保に金融機関から融資を受け、月々の賃料で返済していくのだから当然です。

もし一括で借り上げてくれれば・・・

手残りは少なくなりますが、入居者が入ったかどうかは関係なく、賃貸経営の煩わしさも感じず、なにもしなくても毎月決まった金額が口座に溜まっていく・・・それが融資を受ける○○年続くならばリスクもない、よし、やろう!と決断するのです。しかし・・・

  • 一方的に借り上げ契約を解約された
  • 借り上げ賃料の値下げを断ったら解約された

上記2点のようなトラブルが特に問題になっています。貸し手・借り手のそれぞれの言い分は以下のとおりです。

借り上げ業者の言い分

「当初は○○年借りる予定でしたが、今の借り上げ賃料だと入居者が決まらなくなってきました。現在の借り上げ賃料を下げて頂かないと、事業として成り立ちません。借り上げ賃料を下げて頂けないでしょうか?下げてくれないなら残念ながら解約するほかありません」

オーナーの言い分

「え!!?そんな、○○年は借りてくれるっていう約束だからアパートを建てたのに、金額を下げなければ借り上げを打ち切るなんて詐欺だ!」

いきなりこんなこと言われて、オーナーが怒るのも無理はありません。全てのプランが根底から覆されるからです。

しかし、借り上げ業者も慈善事業で借り上げを行っているわけではありません。利益が出ない物件をいつまでも当初の条件で借り続けてくれるほどお人好しではありません。満足な説明もしない借り上げ業者のやり方はもちろんイカンですが、オーナー側も

「なぜ一括借上げを行えるのか?」

のカラクリをしっかりと理解しておくべきです。以下に一括借り上げの仕組みをご説明します。

一括借り上げの仕組み

借り手である一括借り上げ業者は、一棟100万円(*金額は簡略しますが)で借りたものを、150万円で「又貸し」し、その差額50万円が利益とするのです。

80万円でしか貸せないのに、100万円で借り続けていては、毎月20万円の赤字になってしまいます。利益を出すためには、当然借り上げ賃料を80万円以下にしないといけません。

部屋を借りると考えてみましょう

対象が建物全体で大きくなっているので気づきにくいかもしれませんが、簡潔に整理すると、要は借り手と貸し手の間で結ぶ建物一棟の「ただの」賃貸借契約です。より分かりやすく考えるために、自分が「10年間借りる」という約束で部屋を借りたと考えてみてください。当初は10年間借りるつもりだったとしてでも、ある日突然、

  • 転勤で引っ越すことになった
  • 結婚することになった
  • 田舎に帰ることになった

などの理由で解約せざるを得ないこともあるでしょう。そのとき、解約しようとしたら、

「いや、そんなのダメだ!10年間借りてくれる約束だろ!?約束通り今までと同じ条件で借りててくれ!」

と、オーナーに言われても困りますよね?多少強引かもしれませんが、考え方はそれと同じです。

貸し手に強制する権力はない

つまり、「○○年一括借上」とは言っても、必ずしもず~~~っと借り続けてくれるわけではなく、解約の自由は、借りてる方にあり、貸してるオーナーに「借りてろ!」と強制する権力はない、ということです。

広告の見方

一見すると一括借上げというのは楽で便利かもしれませんが、このような落とし穴も存在するのです。ただ、その落とし穴も、メリットの裏にあるデメリットに対して盲目的にさえならなければ、避けられるものなのです。

ボクの好きな本、サン・テグジュペリの「星の王子さま」で、

「大切なものは目には見えないんだ」

というセリフが出てきますが、これは非常に言い得て妙で、消費者が知っておくべき一番大切なこと(*多くはデメリット)は大抵、見えにくいものです。試しに不動産の新聞折込広告を見てみましょう。小さく書かれた文字がスミの目立たない場所にあるはずです。そこにこそ、一番重要なポイント、デメリットが書かれた場所なのです。

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